アベノミクスの影響で円安が進み株価が上昇したことによって、製造業を中心をする大企業は大きく業績を伸ばしている。一方、実質賃金指数は、昨年より16ヶ月連続で前年同月比がマイナスである。私の周りには株価の上昇で喜ぶ人よりも消費税3%増や円安による物価の上昇で苦しんでいる人の方が多く見受けられる。
わが国のこのような経済状況の中、親の介護と仕事を両立させるため正社員から転職した人は年収の落差を強いられ、生活苦を余儀なくされている。40歳以上の男女のうち介護転職をした人の割合は25%、転職先でも正社員として働いている人は男性では3人に一人、女性にあっては5人に一人であった。そしてその収入を見ると、男性は61%、女性は50%へと減少し、四分の三以上の人たちがこの転職を後悔している。(明治安田生活福祉研究所)
そもそも我が国の介護保険制度は、高齢化の進展に伴い要介護高齢者の増加、介護期間の長期化など、介護ニーズが増大する一方で、核家族化の進行、介護する家族の高齢化など、要介護高齢者を支えてきた家族をめぐる状況も変化してきたため、高齢者の介護を社会全体で支えあう仕組み(介護保険)として2000年に創設されたものである。ところが現在の高齢者の介護は、多くが家族での負担となってきている。いわゆる在宅介護である。
原因は、経済的な問題、在宅介護と両輪になる高齢者介護施設が少ないこと、介護労働人口がきわめて少ないこと等々が挙げられる。さらに後者を掘り下げると介護職員の処遇が他の職種に比べて良くないこと、大きくは医療・介護・保育の世界に夢を抱かせない、子育て時における教育の貧困さまでもが考えられる。
そこで私は提案したい。安部首相は教育改革の検討会議の中で「教育バウチャー制度」の検討を揚げているようであるが、介護現場にもこの「バウチャー制度」導入を検討したい。そもそも「バウチャー」とは、引換券・割引券の意味であるが、国や自治体が目的を限定して個人を対象に補助金を支給する制度である。所定の手続きにより引換券として支給する方式が多く、教育・保育・福祉などの公共サービスが対象で、利用者はその中から必要なものを選択して、引換券を提出してサービスを受ける、というものである。
この制度を現在の福祉の現場で利用すれば、在宅介護の高齢者が特別養護老人ホームや短期入所施設等の方が入院中などで空いたベッドを利用券一枚で超短期的に利用できるし、施設側も空きベッドの解消につながる。この受け入れ可能状況については常時インターネットを通じて配信することによって、在宅介護者は短い期間ではあるが、家族の介護から逃れ、休息(レスパイト)を得ることができ、また自らの仕事にも専念できる。
一方、受け入れる施設側では不特定多数の要介護者とその家族がクライアントとなるために、常に第三者評価を受ける立場となり、職員のスキルアップと施設環境改善の努力を怠ることができない。この結果が、施設評価につながり、さらにはわが国の介護レベルのアップにつながり、医療分野において「看護学」というものがあると同様に福祉分野における「介護学」の確立につながるのではないだろうか。
介護バウチャー制度に対する課題、問題点は山積していることは十二分に承知はしているが、ゴールは「要介護者誰も」が「利用券一枚」で「いつでも」「どこでも」「介護を受けることができる」「介護システム」の構築とレスパイトケア(介護者の休息)である。師走のうちに初夢を早く見すぎた私でした。
伊藤 克之