早いもので、今年ももう師走である。冬の到来で、寒くてなかなか布団から出られない人も多いのではないだろうか。母親が息子を起こしに部屋に入る。
ー太郎ちゃん、起きなさい、時間ですよ。
「寝かせてよ。疲れているんだ!」
ー太郎ちゃん、起きるのよ。学校に遅れますよ!
「もう学校に行くきたくない!行きたくないったら行きたくなんだ!」
ーでも太郎ちゃん、そういうわけにはいかないでしょ! だってあなたは校長先生なんですからね。
今年の日めくりカレンダーの残りもあと数枚になってしまった。こんな小咄があった。
昔、雷と月と日とが一つ宿に泊まった。雷が目を覚ますと月と日がいない。女中に聞くと早立ちだという。雷は感心して「月日のたつのは早いものだ」 すると女中が「雷様はいつご出発で?」 雷「さよう。夕立じゃ」
人生において30歳の人は30キロメートル、60歳の人は60キロメートルのスピードで日々を送っていると言われている。とすれば、齢71歳の私は、毎日を70キロメートル以上のスピードをもって過ごしていることになる。もはや制限速度を優にオーバーして、道路交通法違反の域に入ってしまっている。
ヒトの皮膚は約28日で新しい皮膚と入れ替わっている。計算してみると、私は900回以上も変身したことになる。髪の毛一本の寿命は男性でおよそ3~6年、女性は約7年と言われている。頭皮内で新しい髪の毛ができると、古い髪の毛は抜ける。その数は1日で50~100本と言われている。しかし悲しいかな、私には抜けてしまった髪の毛の跡継ぎがいない。禿頭になるのは時間の問題かもしれない。その時は神(髪)のみぞ知る。「神(髪)っている」なんて喜んではいられない。
藤沢健太・井上慎一著〈時間〉ものしり大百科によれば、時間は時と場合によって感じ方が変わってくる、つまり本当の時間と心に感じる時間は違っているのだ。
時間の流れる早さを感じるときは、新しい体験や楽しい時、物事に熱中している時であり、時間がたつのが遅く感じられるは怖い思いをした時やイヤな思いをしたときである。これは記憶すなわち脳の活動と深くかかわっている。子どもの頃は新しい体験が多ければ多いほど脳が活発に働き、たくさんの記憶をつくっていく。大人は長く生きている分、たくさんの経験をすでにしているため、前に経験したことを繰り返すことが多くなる。そうすると、脳で新しい記憶をつくる活動が減ってしまう。
心が感じる時間の長さが、新しい経験により新しい記憶をつくる回数によって違ってくると考えられているため、子どもと大人では1年の長さの感じ方が違ってくるのである。
細胞の再生能力の衰えにより皺が増え、容貌に衰えをきたし、筋肉量が減少し、体力の減退も引き起こす。これがサルコペニアであり、要介護者となる入り口である。テクテク(適度な運動)、カミカミ(三度の規則正しい食事)、ニコニコ(心の健康)、ドキドキ(五感を使った感動)を実践し、健康年齢を伸ばそうではありませんか。
-花の色は うつりにけりな いたずらに わが身世にふる ながめせしまに 小野小町
伊藤 克之