お休み処「わびすけ」

ブログアーカイブへ≫

初鰹とホトトギス

5日のこどもの日が最後の休日となったゴールデンウイークが終了した。コロナ禍の影響で、今年は消化不良を抱えたようなGWであった。読者の皆さんもきっと同様のストレスを感じて過ごされたのではないだろうかと推察している。

我が国において、外国人を含む14歳以下の子どもの数は、前年より19万人少ない1493万人で、40年連続で減少している。新型コロナウイルス禍の2020年の出生数は過去最少であった。徳川幕府の第11代将軍・家斉の子どもの数は50人を優に超えたが、成人できたのは約半数だったと言われている。

当時に比べれば医療、経済水準、衛生、福祉がダントツに向上し、世界でトップレベルの乳児死亡率(年間の1000出生数あたりの生後1年未満の死亡数)を誇っている日本であっても、子供人口の減少には歯止めがかからないのが現状である。(参考資料2021.5.5.編集手帖)要するに、これは出生率の低下が大きなネックとなっている。

また、桜の盛りが終わりさわやかな若葉・青葉の5月になると、4b2422b1e310a68339072e29ee6c8492_t_jpegいつも脳裏をよぎるのが「目には青葉 山ほととぎす 初鰹」の、江戸中期の俳人・山口素堂の句である。初夏の季節感を視覚、聴覚、味覚でとらえ、季語を3つも入れたこの句は、春から初夏への季節の変化を最も象徴的に表すものの典型とされている。

桜は咲いてもすぐに散る。ホトトギスは山からやってきても「あっ」という間に帰っていく。ホトトギスには時鳥、不如帰、杜鵑、蜀魂、子規、郭公、冥途鳥、無常島、魂迎鳥、夕影鳥、恋し鳥、沓手鳥、霍公鳥、杜宇、等々の字が使われている。「キョッキョ キョカキョ」と鳴く、ホトトギスは全長28cm程度のカッコウ科の鳥である。口の中が真っ赤であることなどが「血」や「死」をイメージさせるためか、正岡子規はカリエスを患ってよく吐血したので「子規」と名付けたという。徳富蘆花の小説にも、ヒロイン・浪子の病患を扱った小説「不如帰」がある。

このようにすぐに所在が分からなくなることから、「声も 丸てはきかぬほととぎす 半分ゆめのあかつきのころ」(頭光)、「ほととぎす 自由自在にきく里は 酒屋へ三里 豆腐屋へ二里」(桑楊庵光)の句でも詠われている。

一方、「初鰹銭と辛子で二度涙」と川柳で読まれたほど、江戸時代は鰹の初物は人気があったという。江戸時代、「初物は寿命が延びる縁起物」ということから、相模湾で釣れた初ガツオは買い手が殺到し、1本3両、今の値段なら10万円以上になったと言われている。(編集手帖2021.4.30.より)

そんなわけで、当時は「まな板に 小判一枚 初鰹」(宝井其角)と謳われもしたが、「初鰹は女房子供を質に置いてでも食え」と言われるほど人気があったという。

私は、魚は好んで食べる方ではないが、「鰹のたたき」大好きである。別名「土佐造り」と言うらしいが、かつて息子が「ふるさと納税」を使って取り寄せてくれた「土佐造り」はとても美味しかった。江戸時代からも捕れたという相模湾の「かつお」よりずっとずっと美味しかった。土佐づくりは新鮮なかつおを皮付きのままおろした節を、表面だけ火が通るように炙り、冷水でしめる。そして藁を使って炙ると香りがよくなる。21119269水気を切って1cmほどの厚さに切り、少々塩をふって、又は包丁の背などを使ってたたく。大皿に盛って、上から薬味とタレをたっぷりかけて食べる。薬味としては生姜、ニンニク、大根おろし、ネギ、アサツキがよく合う。タレにはレモンやスダチなどの柑橘系の酸味を利かせたポン酢や醤油ダレがよく合う。(食の歳時記・旬の味より)

伊藤 克之