恥ずかしながら私が歌舞伎を観劇したのは後にも先にも30年以上前の一度のみである。演台は「宗偏流忠臣蔵」だったと記憶している。内容は茶の湯の会で知り合った仲間から吉良上野介の動向を入手し、この情報から吉良邸討ち入りが決行されるストーリーであった。江戸時代の旅人はこんなことも言っていた。「馬には乗ってみよう。人には添うて見よう」
職員を採用するとき、私は採点を60点から加算していくことにしている。格好をつけて言うならば、性善説が原点である。それ故何度か裏切られたことも経験している。しかし、騙すより騙されたほうが楽である。裏切るより裏切られたほうが心の整理がつきやすい。
話は大きく変わるが、私は計画から完成まで、三年越しで家を建て替えた。家内と御殿場市に買物に行った帰り路のことである。東名高速の秦野・中井インターを降りて車を走らせていると、道路わきに建てられた真新しい純和風のモデルハウスが目についた。檜の香りが車の中まで届いてくるような雰囲気であった。早速、数日後の日曜日に家内を誘って見学に訪れた。これが我が家新築のスタートである。数十回の打ち合わせ、真夏の旧家の解体、秋から冬にかけての組み立ての工程の中で、秦野市にある新進建設の社長・社員との交流、ご苦労をお掛けした職人さんとの交わりができた。これも皆一期一会であり、よい思い出である。
夏の猛暑の中、滝のような汗を流して鉄筋コンクリート造りだった旧我が家を解体してくださった職人さん、頑丈でピカピカの基礎を打ってくださった職人さん、木の香りがする木造の家を建ててくださった職人さん、そして痒いところまで手が届いた設計をしてくださった一級建築士の斉藤先生。ほとんどの人たちは、家が完成して私たちが住むようになるころには、すでに次の現場でお仕事に励まれていて、完成した我が家を見ることは滅多にない。私は「菊造り、菊見るときは影の人」(吉川英治)の心境であろうと常々察している。
モノを成し遂げたり、作り上げる裏側にはたくさんの人々の思いとご苦労が隠されている。私はういすたりあの職員しかり、このような出会いを大切にしたいと日頃から思っている。
これからが本題なのですが、新進建設のホームページには家を建てた方々を取り上げる「オーナーズレポート」というページがある。ここで我が家を取り上げていただいた。ここまでは誰しもが考えることかも知れませんが、新進建設は会社のホームページから私たちが運営している「高齢者福祉施設・ういすたりあ」のホームページまで入っていけるような手順まで考えて下さっていたのである。私事で出会い、そこからお付き合いが始まった施主の仕事のPRまでしていただいて、私は大感激である。
すると今度は今皆様がご覧になっている「ういすたりあ」のホームページを作ってくださったDoo Companyの皆さんがういすたりあの職員の投稿したブログ、フェイスブックを呼んでくださり、「いいね!」を押してくださり、友達にもPRしてくださる。ありがたいことである。
「一期一会」から得られるものは枚挙に暇がないが、モデルハウス「檜の香り」への一目惚れから、一期一会に繋がり、それが「友達の輪」に広がり、共存共栄の道が築き上げられる。人の出会いって、なんて素晴らしいことなのでしょう。
伊藤 克之