長野県、岐阜県にまたがる御嶽山が噴火して今日(4日)で1週間が経過した。亡くなられた方は47名に達し、1991年の雲仙・普賢岳を上回る戦後最悪の惨事となっている。さらに16名の安否不明者がいると報道されている。過酷な条件のもと二次災害に気を配りながら救助活動に献身されている1000名を超える救助隊員の活動、奮闘には、ただただ頭が下がるばかりである。亡くなられた47名のうち、46名は噴石などによる損傷死、1名は熱傷死といわれている。
この1週間でマスコミは盛んに「心肺停止」という言葉を多用した。死亡と心肺停止ではどう違うのであろうか。「死亡」という文言は、医師もしくは歯科医師が診断して初めて使えるものであって、「心肺停止」「呼吸停止」「脈拍停止」「瞳孔散大」の4つすべてを医師もしくは歯科医師が診断して初めて成立するものである。したがって、医師、歯科医師が「死亡」と診断しなければ死亡と判断できないため、警察、自衛隊、消防隊員等の救助隊は、発見した登山者の状態(心肺停止、呼吸停止等)を見て「心肺停止」としているのである。また、心肺停止状態から蘇生する可能性もあるのである。
「死亡」というのは、単に「人が亡くなった」というだけではなく、厚生労働省が行っている死亡統計や、相続等の法律上の要件として重要な意味を持つのである。「心肺停止」=「死亡」であるとしたら、心臓の手術などで人工心肺を使用して心臓と肺の機能を一時的に停止させると、心肺停止状態になるため、この時点で手術中の人は自動的に死亡したことになってしまい、相続が開始するため、その人の財産はすべて相続人のものとなってしまう。
また、身内の資産家等が亡くなり、相続権を有する人が同時刻に「死亡」とみなされた場合は、本人が相続人として名を連ねられるか否かで死亡時刻も大変重要になってくる。そのため、死亡診断書には死亡時刻、原因、場所等々細かく記載しなければならないことになっている。
今回の御嶽山登山者の中には、親子や親しい仲間同士で紅葉(コウヨウ)を堪能しに行かれた人たちもあったと聞いている。ちなみに紅葉(コウヨウ)とは、秋に野山の木々(落葉樹)が冬に備えて落葉する前に紅や黄色に葉の色が変わることや変わった状態を総称するのだそうである。一方、紅葉を『モミジ』と読むと、カエデの中の特定のものを指すのだそうである。広島県の花を形取って作られた「もみじまんじゅう」 カナダ産のカエデの樹液から作られた「メープルシロップ」は有名ですが、「紅葉狩り」に行き、美味しいものを食べ、景色を堪能しながらも、御嶽山で尊い命を落とされた方々への冥福を祈ることだけは心がけたいものである。
伊藤 克之