主婦が八百屋の主人にたずねた。
「ニンジンを食べるのは目にとってもいいとか聞いたけど、本当かしら?」
『奥さん、あなたはメガネをかけたウサギを見たことがありますか?』
若い女が産婦人科医に電話をかけてきた。
「あの、お忙しいところお騒がせしてすみませんが、診療室にピンクのパンティーがありませんでしたか? 午後の診療のとき忘れたような気がするのですが」
『あいにくですが、何もありませんでした』
「そうですか! じゃ、ひょっとしたら歯医者さんのとこかしら・・・」
このようなことは現実にありえないが、人に言えない失敗談は多々あるものである。ましてや4月から入職された新人職員たちは、緊張が相まってこの数は増していることだろう。
私の知人は、親の手術に立ち会うように医師から言われて手術室に入ったところ、血を見て貧血をおこし倒れてしまった。しかし、彼はその後脳外科医として大成している。
「ういすたりあ」の施設長も、初めての介護でオムツ交換時に糞便を見て、嘔吐した経験を持つし、副施設長はデイサービスで認知症の利用者に服薬の介助を行ったところ、薬を飲んだ振りをされ、トイレで吐き出されてしまった。彼はそれを手でスクイ上げ、急いで上司に相談に行ったという。
現在は審美性を考慮してあまり多く用いられていないが、歯科医師はかつて奥歯の虫歯の修復に金属の詰め物(インレー)を詰めた。現在は歯と同じような色の樹脂状のものを流し込んで固めたり、削った歯の型を取って白い詰め物を作って合着したりしている。最近では3Dの技術を用いて製作することまで行われている。
私がインターン(院内実習生)の頃の話である。歯の詰め物を作る作業には間接法と直接法の二通りがあった。間接法は、歯の悪い部分を削り取り、その歯の型を採得し模型を作り、口腔外で金属の詰め物を作る方法である。直接法は、歯を削ったところに軟化したワックスを圧接し、口腔内でワックスに豊隆を付けたり、溝をつくったりして、歯の本来の形に彫刻を施すものである。問題はこれからである。この彫刻を施したワックス(インレーの原型)を如何に形態を損なうことなく、上手に口腔外に取り出すかである。それには1,2cmの長さに切った細い針金を熱してワックスに挿し、ただひたすら針金が冷えてワックスに固着するのを待って、歯からワックスとともに抜き取るのである。この間患者さんは口を開いたまま。歯科医師の卵は手をできるだけ動かさないように、息を止めてピンセットを固定し、ただひたすらワックスが硬くなるのを待つのである。
針金が冷めてワックスに固定されると、そこで針金(これが後に金属を流し込む流入通路となる)と共にワックスを取り出して、鋳造の工程に移るわけであるが、この数十秒が待てず、針金が早く冷えてワックスと固着するようにと、患者さんの口の中に「フー、フー」と息をかけて冷ました大バカ者や、熱した針金を緊張のあまり患者さんの口腔内に落としてしまう輩もいた。
仲間は全国に散らばって、院長として慕われ、地方でいろいろな役職について活躍している。